誘導灯の種類や誘導標識との違い、設置基準について解説
誘導灯・誘導設備は火災発生時にスムーズに避難するために必要な設備であり、それぞれ設置に適した場所や大きさなどによってさまざまな種類があります。そのため、「建物や設置場所によってどのタイプの誘導灯・誘導標識が適しているのか?」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか?
本記事では、誘導灯と誘導標識の違いや種類、設置基準について解説するとともに、視認性向上のためのアイテムもご紹介します。
誘導灯・誘導標識とは
誘導灯は電気を使用
誘導灯は電気を使用
誘導灯は、災害時や停電時に、建物内の人々を安全な場所へ誘導するための照明設備です。電気を使用して光を発することで視認性を確保でき、暗い場所でも避難経路や避難口を明るく照らせるため、安全かつスムーズに避難することができます。
内部にバッテリーを備えており、停電時でも数十分は点灯し続けます。
誘導標識は蓄光や反射材を使用
誘導標識は、火災時に建物内にいる人々を屋外に安全に避難させるため、避難口の位置や避難の方向を明示した標識のことです。蓄光素材や反射材を使用して視認性を確保し、停電時に光を必要としない環境でも機能します。
デザインは緑色や白色を基調とし、人形や矢印などのシンプルなマークが描かれています。これにより避難経路・避難口の場所や方向を明示しており、さらに視認性を高めるため配置や形状、素材などに工夫が施されています。
誘導灯・誘導標識の違い
誘導灯と誘導標識には以下のような違いがあります。
・光源の有無:
誘導灯はバッテリーや照明器具(光源)を備えており、電気を使って自ら発光します。これにより、暗所でも避難経路や避難口を明るく照らすことができ、安全な避難を促します。
一方で、誘導標識は蓄光式であり、バッテリーや照明器具が不要です。光源を持たないため、蓄光素材や反射材を使用して視認性を確保します。誘導標識は停電時でも機能しますが、照明設備としての機能はなく、周囲の光を吸収し暗所で発光することで避難経路を示します。文字や矢印などのデザインがシンプルで見やすいことも視認性の確保に役立っています。
・設置コスト:
誘導灯はバッテリーや照明器具が必要なため、設置には一定のコストと工事が必要です。一方で、誘導標識は電源不要であり、設置が比較的容易という特徴があります。
・適用範囲:
誘導灯は多くの建物で設置が必須とされる一方、誘導標識は後述するように、工場、倉庫、オフィスビルなど、消防法の規制が比較的緩やかな場所で誘導灯の代替として使用できる場合があります。
誘導灯の種類
誘導灯は設置場所や大きさによって、以下のように複数の種類に分けられます。
設置場所別:避難口誘導灯・通路誘導灯
・避難口誘導灯:
避難口の方向を明示する誘導灯です。緑地に白色の人形ピクトグラムで構成されています。暗闇の中でも視認性を確保でき、避難口を見逃さないように、地上に通じる出入口や直通階段の出入口、廊下や通路に通じる出入口などに設置されます。
・通路誘導灯:
通路の進行方向を示す誘導灯です。白地に緑色の矢印を描いたピクトグラムで構成されます。避難者が容易に視認でき、通路を間違わずに進めるように、通常は天井や壁に設置されます。
上記の2つが一般的ですが、その他にも以下のような誘導灯があります。
・客席誘導灯:
主に劇場や映画館、スタジアムなどの大型施設の客席エリアに設置される誘導灯です。暗い場所で客席の足元を照らすことで転倒、つまずきを防ぎ、非常口へと安全に誘導する役割を果たします。
・階段通路誘導灯:
避難経路となる階段や傾斜路、通路に沿って設置される誘導灯です。特に避難経路が複雑な施設で重宝されます。暗闇の中でも階段や通路の進行方向を明示でき、避難者が安全に下階や出口へ向かえるように誘導します。
大きさ別:A級・B級・C級
誘導灯は大きさに応じて等級が設定されており、小さいものから順にC級、B級(BL形、BH形)、A級と分類されています。
基本的に、大きな誘導灯ほど遠くからでも視認できるため、設置するスペースが広いほど大型のものが必要です。設置場所や施設の用途などに応じて、適切な等級が決まります。
・A級誘導灯:
A級誘導灯は、表示面の縦寸法が0.4m以上の最も視認性が高いタイプであり、広い施設や高層ビルなどでの設置が適しています。避難口が大きく、通路の幅が広い施設でも、A級誘導灯を使用することで遠くから確実に視認でき、避難誘導をより安全かつ確実に行えます。
従来型の誘導灯は蛍光灯が使用されていましたが、現在ではLED光源を採用したコンパクトタイプが主流となっており、A級もLEDタイプに変更されています。
・B級誘導灯:
B級誘導灯は、表示面の縦寸法が0.2m以上0.4m未満のものであり、輝度によって2種類のタイプがあります。設置場所に応じて適切なタイプを選択することが重要です。A級と同じく、現在ではLED光源のタイプが一般的です。
BL形(輝度が低いタイプ)
輝度が比較的低く、主に通路や小さな避難口などに使用されます。設置場所の広さに応じて、適切な輝度を持ったBL形を選定する必要があります。LED光源を使用した高輝度なBL形は、従来型の誘導灯に比べエネルギー効率が良く、コンパクトで長寿命です。
BH形(輝度が高いタイプ)
BL形よりも輝度が高く、視認性が特に求められる場所で使用されます。広い通路や大きな避難口での使用に適しており、従来型よりも明るく、視認性を確保しやすくなっています。
・C級誘導灯:
C級誘導灯は、表示面の縦寸法が0.1m以上0.2m未満の小型タイプであり、比較的狭い空間や小規模な施設に適しています。住宅や小規模な商業施設などで使用されることが多く、狭い通路や小さな避難口で有効に機能します。C級もLED光源を採用しており、従来型の蛍光灯を使用した誘導灯と比べ、熱による変色の心配がありません。
誘導標識の種類
誘導標識は、設置場所や材質によって以下の種類に分けられます。
設置場所別:避難口誘導標識・通路誘導標識
・避難口誘導標識:
避難口の位置を示すために使用される誘導標識です。緑地に白抜きをした人形のピクトグラムで構成されています。避難口の上部、または直近の避難に有効な箇所に設置します。
・通路誘導標識:
通路に沿って設置され、避難者が進行方向を誤らずに避難できるよう、進行方向を示す誘導標識です。白地に緑色の矢印ピクトグラムで構成されており、これにより停電時でも通路の進行方向を確認することができます。床面またはその直近(床面からの高さが約1m以下)で、誘導標識までの歩行距離が7.5m以下の場所に設置します。
・階段誘導標識:
階段に設置される誘導標識で、非常時に階段の進行方向を示します。避難者が階段を降りる際の事故を防ぎ、スムーズな避難が可能となります。階段の踏面端部の位置を示すために、光を発する帯状の標示を設けることもあります。
材質別:反射材誘導標識・蓄光誘導標識
・反射材誘導標識:
反射材を使用した誘導標識は、外部の光を反射することによって視認性を確保するタイプの標識です。停電時にそれ自体では機能しませんが、懐中電灯や車両のヘッドライトなどの外部光源がある場合に機能します。
反射シートや反射フィルムを使用した標識が一般的で、文字や矢印が反射し、暗闇の中でも視認性が高くなります。一般道路や高速道路で使用される視線誘導標(デリネーター)としても多く採用されています。
・蓄光誘導標識:
蓄光誘導標識は光源を必要とせず、暗闇の中で自ら光を発する特徴があります。蓄光素材を使用しており、蛍光灯やLEDライト、太陽光を吸収し、その光を一定時間放出する仕組みです。主に建物内の避難経路を示すために使用され、停電時や非常時に機能し、暗闇でも視認性を保つことができます。
誘導灯を誘導標識に代替可能な施設とは
法令上、誘導灯を設置する必要がない箇所においては、誘導灯の代わりに高輝度蓄光式誘導標識を設置することが可能です。
消防法施行令「防火対象物・別表第一」によると、高輝度蓄光式誘導標識を代替設置できる施設には下記のものがあります。
・5項ロに該当する共同住宅
・7項に該当する学校
・8項に該当する図書館等
・12項に該当する工場
・14項に該当する倉庫
・16項ロに該当するオフィスビル
これらの施設では、主に1階~10階までの有窓階が設置の対象となります。
ただし、現時点で設置されている誘導灯は、消防設備として消防署に届出されているため、代替を行う際には所轄消防署の許可が必要です。
誘導標識は日東エルマテリアルの高輝度蓄光誘導標識がおすすめ
日東エルマテリアルは「高輝度蓄光式誘導標識」を提供しています。蓄光により光るため、停電時や非常時にも有効に機能します。
LED対応のため、蛍光灯からLEDに変更した場合でも、視認性を保つことが可能です。
高輝度蓄光誘導標識についての詳細は以下の資料にて紹介しています。
詳細はこちらをご覧ください。
誘導灯・誘導標識に加えて、避難経路の視認性向上も重要
避難誘導灯や誘導標識は、火災や停電などの緊急時に避難経路を示す基本的な設備です。しかし、これらだけでは十分でない場合があります。
特に、火災時に煙や暗闇の中で視界が悪化すると、誘導灯や標識が見えにくくなる可能性があります。そのため、避難経路の視認性をさらに向上させることが重要です。
このような状況で役立つアイテムが蓄光テープです。
蓄光テープは普段は光を蓄え、暗くなった際に自ら光を放つ特性を備えているため、停電時も避難経路や障害物の位置を明確に示すことができます。
蓄光テープは電力を必要としないため、平時に光を吸収できる環境であれば停電時でも確実に機能します。また、電力を使用しないことから故障の心配がなく、メンテナンスが不要である点もポイントです。
さらに、蓄光テープは粘着性のある裏面を持つため、廊下や通路の側面、階段、手すり、ドアノブなどさまざまな場所に容易に取り付けられます。
蓄光テープは高輝度蓄光テープ エルクライト™で
LEDに対応した蓄光テープは、日東エルマテリアルの蓄光テープ エルクライト™がおすすめです。
高輝度蓄光テープ「エルクライト™JC」と超高輝度蓄光テープ「エルクライト™JD」であれば蓄光する力が強いため、LED照明でも十分な蓄光効果を得ることができます。
また、JIS規格(JIS Z9107)で定められた輝度を大幅に上回り、高い耐候性、耐摩耗性、耐薬品性等を有しており、耐久性に優れています。
LED対応の蓄光テープは日東エルマテリアルの蓄光テープ エルクライト™をお選びください。