蓄光式誘導標識の種類と設置時の注意点を解説

2025年9月19日
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倉庫や工場で手軽に実施できる避難誘導・安全対策として「蓄光式誘導標識」があります。電気を必要とせず一定時間発光するため、停電時にも効果を発揮しますが、設置する際には現場に適した明るさや形状の製品を選び、設置のルールや注意点を守ることが大切です。
本記事では、蓄光式誘導標識の明るさや形状の種類、設置時の注意点を解説します。

蓄光式誘導標識の種類と設置時の注意点を解説 蓄光式誘導標識の種類と設置時の注意点を解説

蓄光式誘導標識とは

蓄光式誘導標識とは、避難口の位置や避難方向を明示した標識の一種です。光を吸収して蓄えることで、暗闇でも発光する仕組みを持っています。通常時は太陽光や蛍光灯、LEDなどの光を蓄え、停電時や照明が失われた状況で自ら発光し、避難経路を分かりやすく示すことができます。
災害時や停電時においても機能を維持できる点が大きな特徴です。

 

誘導灯との違い

誘導灯は、内部に光源と電池を備え、電力を用いて発光する装置です。通常は建物の電気設備から給電され、停電時には内蔵バッテリーにより数十分間は点灯し続けることができます。ただし、バッテリーや照明器具を備える必要があるため、設置するには工事と一定のコストが必要です。

一方、蓄光式誘導標識は光を蓄えて暗闇で発光する仕組みであるため、電源やバッテリーを必要としません。設置の際に工事が不要で、壁や扉に貼り付けるだけで効果を発揮します。コストを抑えつつ、非常時の安全確保に寄与できる点で有効な手段といえます。

誘導灯の種類や誘導標識との違いについての詳細はこちらをご覧ください。

 

明るさの種類(S級・A級・C級)

高輝度蓄光式誘導標識には性能に応じた等級が設けられており、避難時の安全性や設置環境に応じて適切なものを選ぶことが大切です。
一般的にS級・A級・C級の3つに区分され、それぞれ停電後にどの程度の明るさを維持できるかが基準となっています。
以下では、主な等級と性能の違いを解説します。

 

S級:大規模施設向け

S級は蓄光式誘導標識の中で最も高い性能区分です。大規模な商業施設、地下街、病院など、多くの人が利用し、避難時に高い安全性が求められる場所に適しています。

例:S200(200ルクスで20分励起)の場合
– 停電20分後の平均輝度:250 mcd/㎡以上
– 停電60分後の平均輝度:75 mcd/㎡以上

長時間にわたり高い輝度を維持できるため、煙や混雑発生時のように避難が難しい環境でも有効に機能します。

 

A級:多くの一般的な建築物向け

A級は標準的な性能区分であり、オフィス、学校、役所や図書館などの公共施設に広く導入されています。バランスの取れた性能で、多くの一般的な建築物に適しています。

例:A200の場合
– 停電20分後:120 mcd/㎡以上
– 停電60分後:35 mcd/㎡以上

必要十分な明るさを確保しつつ、コスト面でも導入しやすい等級といえます。

 

C級:補助的な役割

C級は最低限の基準を満たした性能区分で、小規模な店舗、倉庫、住宅や補助的な避難経路などに利用されます。避難動線全体をカバーするというよりも、補助的な役割での設置が多い等級です。

例:C200の場合
– 停電20分後:60 mcd/㎡以上
– 停電60分後:20 mcd/㎡以上

必要最低限の視認性を確保できますが、規模の大きな施設や複雑な避難経路には不向きです。

出典:「高輝度蓄光式誘導標識の試験基準及び判定基準」(一般財団法人日本消防設備安全センター 発行)

 

形状の種類(プレート・ステッカー・路面標示シート)

蓄光式誘導標識には、プレート、ステッカー、路面標示シートという3つの種類があります。

ステッカータイプ

ステッカータイプは裏面が粘着仕様になっており、工事不要で簡単に貼り付けできるタイプです。既存の壁や扉にそのまま貼り付けられるため、短時間での導入に適しています。
小規模な店舗やオフィス、または仮設的な用途に適しており、コストを抑えながらも避難誘導機能を確保したい場合に有効です。

日東エルマテリアルでは、ステッカータイプの高輝度蓄光式誘導標識も取り扱っています。
蛍光灯や太陽光などの光を蓄えて、暗闇で発光することで非常灯や誘導灯として使用できる消防認定品の高輝度蓄光式誘導標識です。詳細は以下をご覧ください。

誘導標識は日東エルマテリアルの高輝度蓄光誘導標識がおすすめ
高輝度蓄光式誘導標識カタログ

 

プレートタイプ

プレートタイプは、最も一般的な蓄光式誘導標識です。
壁面や扉にビスや強力な両面テープでしっかりと固定して使用し、設置後のズレや剥がれの心配が少ない点が特徴です。
板状のため安定感があり、耐候性・耐久性にも優れているため、商業施設、工場、オフィスビルなど幅広い建物で長期間にわたって常設できます。

 

 

路面標示シートタイプ

路面標示シートタイプは、床面に直接貼り付けて使用する蓄光式標識です。避難方向を足元に示すことで、停電や照明が故障した時、さらには煙が発生して視界が悪化した状況でも、低い視線から視認できるよう工夫されています。特に工場や倉庫、または通路が広い商業施設などに適しており、安全性を補強する用途で効果を発揮します。

日東エルマテリアルの蓄光路面標示シートは、床面に設置可能な路面標示シートです。
太陽光・蛍光灯・白色LEDなどの光を吸収し、暗所で約6~8時間光ります。詳細は以下をご覧ください。

蓄光路面標示ノンスリップシートエルクライト™ ノンスリップデザイン

 

設置における注意点

プレートタイプやステッカータイプなどの蓄光式誘導標識を効果的に機能させるためには、設置環境や条件に注意する必要があります。消防庁の基準では、照度や視認性、配置に関する具体的な要件が示されており、これらを遵守しなければなりません。
特に注意すべきポイントは以下の3つです。

光がしっかり届く場所に設置する

蓄光式誘導標識は、周囲の光を吸収して非常時に発光する仕組みです。そのため、普段から十分な光量(照度)を確保できる場所に取り付ける必要があります。
照明が常に暗い場所や、光が届きにくい陰になる位置に設置すると、停電時に十分な輝度を発揮できず、避難者の安全を損なうおそれがあります。

出典:誘導灯及び誘導標識の基準 第三 避難口誘導灯の設置を要しない居室の要件
「性能を保持するために必要な照度が採光又は照明により確保されている箇所に設けること。」

 

見えやすい位置に設置する

標識は避難者がすぐに確認できるよう、避難口・階段・廊下の曲がり角など、人が必ず通り、視界に入る位置に設置することが求められます。
また、標識の近くにポスターや広告物、掲示物などを置くと、標識が隠れてしまったり誤認される恐れがあるため、視認性が低下します。そのようなことにならないよう、標識の周囲に視界を遮るものを置かず、視認しやすい状況を維持することが重要です。

出典:誘導灯及び誘導標識の基準 第三 避難口誘導灯の設置を要しない居室の要件
「蓄光式誘導標識の周囲には、蓄光式誘導標識とまぎらわしい又は蓄光式誘導標識を遮る広告物、掲示物等を設けないこと。」

 

距離と配置のルールを守る

蓄光式誘導標識は、通路のどの位置からでも見えるように、設置距離や配置が細かく規定されています。
具体的には、歩行距離7.5メートル以内ごと、または通路の曲がり角ごとに設置しなければならないと基準で定められています。また、避難時に煙が充満しても確認できるよう、床面やその近くに設置することも条件とされています。

出典:誘導灯及び誘導標識の基準 第三の二 通路誘導灯を補完するために設けられる蓄光式誘導標識の設置及び維持に関する技術上の基準の細目
「廊下及び通路の各部分から一の蓄光式誘導標識までの歩行距離が七・五メートル以下となる箇所及び曲がり角に設けること。」


なお、現時点で設置されている誘導灯は、消防設備として消防署に届出されているため、代替する際には所轄消防署の許可が必要です。
付け替えにあたっては必ず所轄消防署様にご確認ください。

 

日東エルマテリアルの高輝度蓄光標識・標示シートのご紹介

蓄光式誘導標識は、停電時でも避難経路を示す重要な安全設備であり、コストや手間をかけずにすぐに設置できます。設置場所に関する注意点やルールを守った上で、積極的に導入すると良いでしょう。

設置工事・電力不要の高輝度蓄光標識

日東エルマテリアルでは、消防認定取得済みの貼り付けタイプの高輝度蓄光式誘導標識を提供しています。大規模・高層建築物の防火対象物及び地階・無窓階・地上11階以上に該当しない場合は、誘導灯の代わりとして使用可能です。
製品ラインナップは A級・C級・中輝度タイプ の3種類があり、施設の用途や求める性能水準、さらにコストに応じて柔軟に選択できます。

それぞれのタイプや価格については、以下の製品資料にて詳細を紹介していますのでご覧ください。

誘導標識は日東エルマテリアルの高輝度蓄光誘導標識がおすすめ
高輝度蓄光式誘導標識カタログ

 

床面に設置可能な蓄光路面標示シート

日東エルマテリアルでは、床面に設置可能な蓄光路面標示シートも提供しています。
太陽光・蛍光灯・白色LEDなどの光を吸収し、暗所で約6~8時間光ります。
屋内外の凹凸面にもしっかり密着し、滑り止めの役割も果たします。滑り止め層の裏面に印刷しているため、デザインが損なわれづらい点も特徴です。
詳細は以下をご覧ください。

蓄光路面標示ノンスリップシートエルクライト™ ノンスリップデザイン

 

お役立ち資料

【ユースケース付き】防災対策としての蓄光テープの課題と選定ポイントについて解説

この資料で分かること

  • 蓄光テープを効果的な防災対策にするためのポイント
  • 防災対策としての”蓄光テープ”の選定ポイント
  • 蓄光テープのユースケース(工場・倉庫・建築現場など)
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カタログ資料

高輝度蓄光テープ エルクライト™ JB.JC.JD 製品カタログ
「エルクライト™」は蛍光灯や太陽光などの光を蓄えて、暗闇で発光する事で目印となる防災用途に開発された高輝度蓄光テープです。 従来の蓄光テープと比較し、JIS規格基準の大幅な発光輝度を誇ります。 <この資料で分かること> - 高輝度蓄光テープ活用による効果 - 高輝度蓄光テープの規格ごとの特長・明るさの比較
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