災害に備えたオフィスビルの安全対策
オフィスビルの選び方や安全なオフィス環境の作り方について解説

2024年9月4日
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さまざまな災害が頻発する日本では、オフィスビルの安全対策は必要不可欠です。オフィスビルの安全対策を徹底することで、従業員や顧客の安全・生命を守ることができ、事業の早期復旧につなげられます。しかし、オフィスビルでどのような安全対策を行えば良いのかわからない方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、オフィスビルに必要な安全対策の種類や、防災を意識したビルの選び方、災害に強い安全なオフィス環境の作り方などを解説します。

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オフィスビルの災害対策の必要性

災害時において、従業員の安全を確保し、顧客や自社が被る災害リスクを軽減することは、企業の社会的責任の中でも特に重要事項とされています。

例えば地震対策では、家具の転倒、落下、移動などによる被害を軽減し、けが人を出さないようにすることや、従業員をはじめとする帰宅困難者の発生に備えておくことが大切です。

企業が自ら被災後の経済活動や救護活動を円滑に行えるように備えておくことは、社会にとって非常に重要であるといえます。

災害の種類

一口に災害といっても、自然災害や事故など、その種類は多種多様です。災害は大きく分けると自然災害・人為災害・特殊災害(CBRNE災害)の3種類があり、人為災害と特殊災害(CBRNE災害)はさらに細かく分類されています。それぞれの特徴は以下のとおりです。

【自然災害】

地震、台風、豪雨、洪水、土砂崩れなど、日本では非常に多くの自然災害が発生し、毎年のように全国各地で被害が生じています。

例えば、日本は太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートが交わる場所に位置しており、世界でも例を見ないほど地震活動が活発です。地震による被害だけでなく、沿岸部では津波のリスクもあります。
また、毎年夏から秋にかけて、太平洋上で発生した台風が日本列島を襲います。台風は強風や豪雨を伴い、洪水や土砂災害を引き起こすことも珍しくありません。山間部では特に土砂崩れのリスクが高く、都市部でも洪水による被害が懸念されます。

 

【人為災害】

①都市災害
大気汚染、水質汚濁、騒音、振動など、都市ならではの環境に起因する災害を都市災害と呼びます。

②労働災害(産業災害)
メンタルヘルスの問題のように、労働が原因となって従業員が病気や怪我を負う災害のことです。

③交通災害
交通事故や飛行機・船舶事故など、交通・輸送機関のトラブルに起因する災害です。比較的小規模な交通事故から、鉄道の脱線、航空機の墜落、船舶の沈没など大規模な事故も含みます。

④管理災害
ずさんな設計や計画、操作ミス、管理の怠慢などにより発生する災害のことです。工場や土木現場などで発生することが多いため、労働災害(産業災害)と重複する場合もあります。

⑤環境災害
水質汚染のように環境破壊が要因となって発生する災害のことです。

 

【特殊災害(CBRNE災害)】

特殊災害(CBRNE災害)とは、化学(Chemical)・生物(Biological)・放射性物質(Radiological)・核(Nuclear)・爆発物(Explosive)に起因する災害を指します。

①Chemical(化学)
有害物質や化学兵器によって起こる災害のことです。サリンや塩素ガスなどを使ったテロ行為が含まれ、救援に向かった人が被害を受けるリスクが高い特徴があります。

②Biological(生物)
生物由来の毒や感染症による災害のことです。新型の感染症のパンデミックや、生物兵器を使ったテロなどが含まれます。

③Radiological(放射性物質)
放射性物質による汚染・災害を指します。原子力発電所の事故や放射能兵器によるテロなどが含まれます。

④Nuclear(核)
核兵器を使った攻撃による災害です。爆発の規模が桁違いに大きいだけでなく、放射性物質による汚染も深刻な被害をもたらします。

⑤Explosive(爆発)
事故やテロによって起こる爆発のことです。①~④に比べ、爆発物は作成が容易であり、誰でも攻撃を仕掛けられるという特徴があります。

特殊災害の中では、例えばBiological(生物)に分類されるインフルエンザの集団感染は日本でも頻繁に発生しています。

各企業においては、どのような災害が発生し得るのか、またその被害の大きさや取り得る対策はどのようなものになるのか、よく検討し準備しておく必要があります。

そこで重要になる考え方が、次章でご紹介する「企業防災」です。

企業防災とは

企業防災とは、企業が従業員や顧客の安全、自社の資産を守るために実施する災害対策のことです。災害対策基本法の第2条の2では、災害を以下のように定義しています。

「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、および災害の復旧を図ることをいう」

防災において、従業員や顧客などの安全を確保することは、被災後の事業の継続・早期復旧を図るうえで欠かせません。また、企業には以下のように、労働契約法の第5条によって事業所で働く従業員を守る安全配慮義務が課せられています。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」

必要な防災対策を行わず、安全配慮義務を怠ったことにより従業員に被害を与えてしまった場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われ、従業員に対して損害賠償を支払わなければならないケースがあります。もちろん、この安全配慮義務は災害時においても例外ではないため、できる限りの防災対策をオフィスで行うことが必要です。また、企業は地域社会の一員として、地域の雇用環境や産業を維持するためにも被害の軽減や早期復旧を果たす責任があります。

以下の記事では、防災対策の基礎やリスクについて解説しています。

オフィスビルに必要な安全対策

本章では、企業防災の中でもオフィスビルにおいて必要な安全対策について解説します。

安否確認の手段を決定する

災害発生時には、従業員が無事であるか確かめることはもちろん、事業の継続や復旧のために従業員が業務に就くことができるのかを確認する必要があるため、安否確認は非常に重要です。

緊急時に安否確認システムを確実に作動できるように複数の端末を用意したり、インターネットのブラウザを通じてどのような場所でも使えるようにしたりしておくと良いでしょう。

また、従業員が安否確認システムに登録したメールアドレスを変更した際、変更の旨を報告し忘れてしまうことがよくあります。その場合、災害発生時に安否確認を行う手段がほぼなくなってしまうので、普段から登録された情報が正しいのかを確認しておく必要があります。

定期的な防災訓練の実施

防災訓練を定期的に行うことも重要です。防災訓練を行うべき理由としては以下の3つがあります。

・従業員や顧客の安全・生命を守るため
防災訓練を通じて、従業員が災害発生時にどのような行動や対応を取るべきか学ぶことで、従業員自身や顧客の安全・生命を守ることにつながります。

・事業の継続性を確保するため
防災訓練は、企業が災害時にも事業を継続できるようにするための準備として役立ちます。訓練を通じて災害への備えを万全にしておくことで、迅速な復旧や事業活動の再開が可能となり、事業の中断による経済的損失を最小限に抑えることができます。

・顧客・取引先への損害回避のため
防災訓練は、顧客や取引先からの信頼を維持し、彼らへの損害を回避するためにも重要です。災害時に迅速かつ適切に対応することで、取引先や顧客に対するサービスの中断を防ぎ、企業の信用を守ることにつながります。

電気や水道、通信、道路といったライフラインが寸断されてしまうと、自社だけでは対処できないケースも多いですが、災害時に自社が被るダメージを最小化できるように防災訓練を徹底することで、顧客へ与える悪影響を小さくすることができます

また、策定したBCP・防災マニュアルを従業員に浸透させるためにも定期的な訓練は必要です。

訓練を行う際は、必ずBCP・防災マニュアルに沿った内容にし、きちんと機能しているのかを確かめます。そして訓練終了後に改善点を洗い出し修正を重ねることで、より効果的なBCP・防災マニュアルへとブラッシュアップさせることができます。

すでに訓練を行なっている場合、一度作成した訓練シナリオを使い回していると内容がマンネリ化し、想定外の事態が発生した際に対応できなくなってしまうため、想定する災害を地震から火災に変えるなど、訓練の度にシナリオを変更することも大切です。

以下の記事では、防災訓練は義務にあたるのか、また企業が実施すべき防災訓練の種類、シナリオ作成について解説しています。

防災グッズの備蓄

一般的に、水道・ガス・電気などのライフラインの復旧や、支援物資の到着までにはおよそ3日かかると言われています。そのため、大規模な災害に備えて最低でも3日分、できれば1週間分の食糧や防災グッズなどを確保しておくと良いでしょう。また、東日本大震災で大量の帰宅困難者が発生したことを機に東京都が定めた「東京都帰宅困難者対策条例」の条例第17号の1では、以下のように定められています。

「事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の3日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します」

この条例は、災害による二次被害から無理に帰宅しようとする帰宅困難者を守るとともに、救助活動の妨げを防ぐという目的があります。なお、「努力義務」とは、その行動をとることを義務づけるのではなく、努力することを求めるという意味であることから、法的な拘束力や罰則があるわけではありません。しかし、万が一の事態に備え、事業所で働く従業員全員(非正規雇用を含む)が数日間生活できるだけの食糧や防災用品などを準備しておくことが賢明です。

なお、労働契約法の第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」とあり、企業には安全配慮義務という法的責任が課せられていることが明記されています。

この法律により、企業が安全対策を怠っていたことが原因で従業員に被害を与えてしまった場合、安全配慮義務違反として法的責任が問われ、従業員に損害賠償を支払わなければなりません。

これは災害時においても決して例外ではなく、予見できる災害に関してはきちんと対策を立てておく必要があるということです。

避難経路の確認

災害発生時に迅速に避難できない、といった事態を防ぐために、あらかじめオフィスのレイアウトを見直しておくことも大切です。

例えば廊下に関しては、スムーズに避難できるように、通路の片側に部屋がない場合は1.2m以上、両側に部屋がある場合は1.6m以上の廊下の幅を確保しなければならないと建築基準法の第119条で定められています。迅速な避難ができるように、出入り口や非常階段など避難経路の近くには避難の妨げになるものは置かないようにするべきです。実際に、平成13年に発生した歌舞伎町の雑居ビル火災では、唯一の避難経路である非常階段が物置代わりにされていたため、荷物が避難の妨げとなり、速やかに脱出できず44人の方が亡くなるという大事故になってしまいました。非常時にこのような事態に陥らないように、避難経路の確保は徹底的に行いましょう。

また、あらかじめハザードマップを確認し、事業所の周囲にどのような被害が発生するのかを把握しておくことも重要です。ハザードマップとは、災害による被害状況・範囲を予測し、安全な避難経路や避難場所を記載した地図のことで、災害別のハザードマップが自治体や国土交通省により公開されています。災害発生時は何が起こるのか分からず、避難経路として決めていた道が建物の倒壊により塞がってしまうことも十分に想定されるため、複数の避難経路を定めておくと良いでしょう。

 

防災を意識したオフィスビルの選び方

防災対策を万全にするためには、オフィスビル選びも重要です。以下では、防災を意識したオフィスビルの選び方について4つの視点から解説します。

耐震性能

まずは「新耐震基準」を満たしている物件を選ぶことが必須です。耐震基準には新旧があり、1981年(昭和56年)5月31日までの建築確認において適用されていた基準が「旧耐震基準」、翌日の1981年(昭和56年)6月1日から適用されている基準が「新耐震基準」と呼ばれています。新耐震基準を満たしているビルであれば、震度6~7の地震でも倒壊しない強度を持ちます。

ビルの建設には1~2年ほどの期間を要するため、1983年以降に竣工したビルを選ぶことがおすすめです。ただし、それ以前に建てられたビルの中にも、耐震性が優れているものや耐震工事によって新耐震基準を持たしているものもあるため、古いビルを購入する際には耐震性をよく確認しておく必要があります。

非常用電源

非常用電源は、災害時に電力が停止した場合、ビル内の重要な機能を維持するために必要です。

多くの大型ビルや新築の建物では、地震のような自然災害で電力が止まることを想定して、非常用の蓄電池や自家発電施設が設置されています。ビルを選ぶ際には、非常用電源の有無やその稼働時間、配電の範囲などを確認しておきましょう。非常用電源がない場合には、ビル管理会社と交渉して電源を導入することも選択肢に入ります。

オフィスビル周辺の環境

ビルの周辺環境を確認することも防災対策の一環として重要であり、地盤の強さや洪水のリスク、避難経路の確保状況などを考慮する必要があります。

具体的には、自治体が公表しているハザードマップを活用し、地震や津波、洪水などの自然災害リスクを事前に確認します。また、火災発生時の避難ルートや周辺に危険物を扱う工場がないかなども確認しておきましょう。こうした自然災害や人的災害のリスクを事前に把握しておくことで、災害発生時に迅速かつ安全に避難できる環境を整えることができます。

オフィスビル管理会社による防災対策

ビル管理会社がどのような防災対策を講じているか確認することも必要です。

例えば、非常用電源の有無、重要な設備の耐震対策、非常時のマニュアルの有無、食糧の備蓄状況、定期的な避難訓練の実施状況などを確認します。水道が止まったときにトイレを使用できるかどうかも確認しておきたいポイントです。管理会社がしっかりとした防災対策を講じているビルを選ぶことで、災害発生時におけるリスクを軽減することができます。

安全なオフィス環境の作り方

防災を意識したビルを選ぶことに加え、自社で安全なオフィスビルの環境を整えることも重要です。具体的には以下の対策を行うと良いでしょう。

オフィス家具・IT機器の転倒防止対策

まずやるべきことは、オフィス家具やIT機器の転倒防止対策です。具体的な対策としては、以下のものがあります。

・デスクに付属した棚に重いものを置かない
・デスク周辺に背の高い不安定な家具や棚などを置かない
・ロック付きキャスターをロックする
・引き出しに耐震ラッチを使用する
・デスクやOA機器、背の高い書庫などを床や壁、他の家具に固定する

これらの対策により、地震の揺れによる家具や機器の移動・転倒を防ぐことができます。また、オンプレミスのサーバーを導入している場合、データが消失しないようにサーバーの転倒防止対策を行うことも重要です。

避難経路を意識したオフィスレイアウトの工夫

避難経路を意識したオフィスレイアウトにすることで、緊急時に迅速に避難できるようになります。

避難経路を確保するためには、家具を壁に沿って配置・固定し、動線を広くとることが重要です。避難誘導灯がどこからでも見えるようにすることや、避難経路に遮蔽物を置かないことも必要な対策です。

データのバックアップの実施

災害時に顧客情報や製品情報などの重要なデータが消失するのを防ぐため、データをバックアップしておくことが不可欠です。

定期的にデータをバックアップし、複数の拠点やクラウドストレージに保存することで、災害後に迅速に業務を再開できるようになります。データのバックアップだけでなく、セキュリティ上のリスクを軽減することも考慮する必要があります。

拠点の分散・テレワークの導入

1か所のみで事業を展開していると、その拠点が被災した際に事業継続が難しくなります。

それに対して、拠点を分散することで、ある拠点が被災しても他の拠点で業務を継続しやすくなります。また、テレワークを導入することで、従業員が安全な場所から業務を続けられ、交通機関が麻痺しても自宅で業務を行えるようになります。拠点を分散する際には、例えば東京と大阪にそれぞれオフィスを設けるといったように、地理的に離れた場所に拠点を置くとより効果的です。

労働安全衛生法に基づいた定期的な点検・整備

労働安全衛生法に基づき、以下の点検を実施することも大切です。

・照明器具の点検:
蛍光灯の交換、照明器具の清掃などを行い、常に明るい環境を保ちます。

・電気設備の点検:
配線、コンセント、漏電ブレーカーなどの定期的な点検を行い、電気火災を防ぎます。

・床面の点検:
段差の有無、滑りやすい場所の有無などを確認し、必要に応じて滑り止め対策を行います。

・非常口の点検:
非常口の表示がわかりやすいか、開閉がスムーズかなどを確認し、避難経路を確保します。

まとめ

安全性を確保しながら事業を継続できるオフィス環境づくりは非常に大切です。頻発する災害リスクに備え、今一度安全対策が十分に行われているか、オフィス環境を見直してみましょう。

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