EVシフトとは?
推進される理由や普及率、将来性などを解説

2024年4月25日
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脱炭素社会の実現に向け、EVシフトが世界的に加速しています。EVシフトは地球温暖化対策としてはもちろん、エネルギー安全保障や技術革新などの面でも非常に重要です。しかし、日本は世界の主要国に比べ、EVシフトがあまり進んでいない現状があります。本記事では、EVシフトを推進すべき理由や日本と世界における普及率、将来性などを解説します。

EVシフトとは?<br>推進される理由や普及率、将来性などを解説 EVシフトとは?<br>推進される理由や普及率、将来性などを解説

EVシフトとは

 

EVシフトとは、これまで自動車輸送の中心を担ってきたガソリン車からEV(電気自動車)への転換を図る動きのことです。地球温暖化対策として、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題となっております。走行時に温室効果ガスを排出しないEVは環境への負荷が小さく、カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量を差し引きでゼロにすること)を実現するうえで不可欠なものとして注目されています。

2015年開催のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択されたパリ協定では、世界共通の長期目標として、産業革命前と比べて気温上昇を2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑えるよう努力することを定めています。この目標を達成し、地球温暖化の影響を抑えるための方策としてEVシフトの重要性が非常に増しています。

EVシフトは世界的に重要な施策として認識されており、中国、イギリス、アメリカ、フランス、ノルウェーなど、世界各国でEVシフトに向けた取り組みが進められています。

EVシフトに取り組むべき理由

EVシフトに取り組むべき理由は多岐にわたりますが、本章では主な理由をご紹介します。

環境保護と持続可能性

CO2削減

二酸化炭素は人間のさまざまな活動により放出されますが、特に化石燃料の燃焼により大量に排出されます。エネルギー起源の二酸化炭素排出量(電気・熱配分後排出量)を部門別に見ると、2021年度は運輸部門が19%(1億8,500万トン)を占めている※ことから、EVシフトは二酸化炭素の排出削減のために不可欠な取り組みであると言えます。

EVはガソリン車に比べて運転時の二酸化炭素(CO2)やその他の大気汚染物質の排出量が少ないため、地球温暖化や環境汚染の軽減に貢献します。再生可能エネルギーと組み合わせることで、さらに持続可能性を高めることが可能です。

※出典:環境省「2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について」

エネルギー安全保障

ドラム缶

エネルギー安全保障とは、ある国や地域が必要なエネルギー資源を確保し、エネルギー供給に関するリスクを最小限に抑えることです。
ガソリン車の動力である内燃機関は石油をエネルギー源としていますが、日本は石油の大部分を輸入に依存しているため、地政学的危機の発生などにより海外からの供給が減少・途絶した場合、国内輸送に深刻な影響が出ることが考えられます。

EVが普及すれば、自動車輸送における石油への依存度が低下し、エネルギー供給における地域的偏りや地政学的リスクが軽減されます。
ただし、EVを動かすための電力が火力発電に依存していると、エネルギー安全保障上のリスクを抑えることはできません。EVシフトとともに、再生可能エネルギーの普及をはじめエネルギーの多様化や国産化を進める必要もあります。

技術革新と経済成長

イノベーション

EVの開発と普及により、新たな産業やビジネスモデルが生まれ、雇用の創出や経済成長が促進されます。航続距離や充電時間の改善など、EVそのものの技術革新が進んでいることに加え、蓄電池など関連する技術のイノベーションも促進されることが期待できます。
また、自動運転技術やモビリティサービスなどの先端技術がEVに組み込まれることで、さらなる産業技術の革新にも寄与します。

公衆衛生の向上

綺麗な空

ガソリン車は、二酸化炭素だけでなく窒素化合物(NOx)や粒子状物質 (PM)など、多くの大気汚染物質を排出し、酸性雨や光化学スモッグなどの原因となっています。
EVが普及し、ガソリン車の台数が減少することで、こうした大気中の有害物質を削減することが可能です。これにより、呼吸器疾患や心血管疾患などの病気の発生率が低下し、公衆衛生の改善が期待されます。

国内と海外のEV普及率

日本や海外では、現状でどのくらいEVが普及しているのでしょうか。
本章では、国内とアメリカ、ヨーロッパ、中国のEV普及率についてご紹介します。

日本のEV普及率

日本自動車販売協会連合会によれば、日本国内における2023年のEVの新車販売台数は約4万4,000台でした。ガソリン車等を含む新車すべての販売台数は約265万台であり、EVが占める割合としは約1.7%です。
なお、2020年は約1万5,000台(0.6%)、2021年は約2万1,000台(0.9%)、2022年は約3万2,000台(1.4%)であり、台数・割合ともに徐々に増加しています。

※1
※2
※1・※2:日本自動車販売協会連合会「年別統計(2019年~2023年) 」より作成

なお、2023年のPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売台数は約5万2,000台であり、新車販売台数に占める割合は約2%です。このことから、普通乗用車においては、現状ではPHEVの普及度合いの方が高いことがわかります。

また、普通乗用車に軽自動車を合わせたEVの新車販売台数は約9万1,000台であり、前年比で約1.5倍に増加しており、シェアは約2.3%です。
2022年に軽EVが販売されたことで、2021年には約0.6%だった普及率が2022年には約1.7%となっており、着実に普及率が伸びていることがわかります。
なお、EVにPHEVも含めた新車販売台数の合計は約14万3,000台であり、シェアは約3.6%となっています。

※参考:一般社団法人 日本自動車販売協会連合会HP

アメリカのEV普及率

 

アメリカでは、2023年のEV販売台数は約119万台であり、新車販売台数に占めるシェアは約7.6%でした。2022年のシェア率は5.9%、2021年には3.2%であったことから、徐々に普及していると言えます。

この背景には、インフレ抑制法により最大で7,500ドルの税額控除を受けられることや、「2030年までに新車販売のうち50%以上をEV(PHEV含む)とFCVにする」という目標のもと、EV充電器などのインフラ整備費用として巨額の予算を投入していることなどがあります。

なお、アメリカでは州によってEVへの補助や規制等の制度が異なり、普及の度合いに大きな違いがみられます。例えば、中西部は普及率が数%ほどの州が多い一方で、ZEV(ゼロエミッション車)規制のあるカリフォルニア州では、2023年の普及率は20%を超えています。

※参考:COX AUTOMOTIVE「A Record 1.2 Million EVs Were Sold in the U.S. in 2023, According to Estimates from Kelley Blue Book」
California Energy Commission「New ZEV Sales in California」

ヨーロッパのEV普及率

欧州自動車工業会(ACEA)によると、2023年のEU全体の新車販売台数は1,055万台であり、うちEVの販売台数は約154万台、シェア率は約14.6%でした。前年(2022年)に比べると販売台数は37.0%増、シェア率は2.5ポイントの増加となっています。また、2023年には初めてディーゼル車のシェア(13.6%)を超えました。このように、ヨーロッパではEVの普及が進んでいます。

EUでは、EVの購入に対する支援策が充実していたこともあり、ここ数年EVの販売シェアが伸びていました。しかし、ドイツでは、EV等の低排出ガス車の購入に対する助成制度が2023年12月に終了したほか、フランスではEV新車購入に対する環境報奨金の適用条件が厳格化されるなど、支援策が徐々に縮小しています。
こうしたことから、今後もこれまでと同様にEVのシェアが伸びるかは不透明な状況です。

※参考:日本貿易振興機構(JETRO)HP
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/01/07b5ab41aec7bd9f.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/12/3c8ae8818a59f100.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/12/b0318aa67cd48f1f.html

中国のEV普及率

中国自動車工業協会(CAAM)によると、2023年の中国における新車販売台数は、前年比132万台増の約3,009万台であり、EV(BEV)の販売台数は約669万台でした。販売台数全体に占めるシェア率は22.2%となっています。

中国ではPHEV(プラグインハイブリッド車)やFCEV(燃料電池車)を含む車両をNEV(New Energy Vehicle)と呼んでおり、販売台数全体に占めるNEVの割合を一定以上にすることを義務付けています。このNEV規制は2019年から開始しており、EVの普及を後押しすることで自動車産業の先進国である日本や欧米に追い付き、競争力を強化する戦略をとっています。

なお、当初のNEV規制ではNEVのシェアを2025年に20%、2030年40%にする目標でしたが、想定以上にNEVが普及しつつあることから、2027年に45%というより野心的な目標を設定することとなりました。

※参考:自動車産業ポータルMARK LINES HP
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/automotive-sales-in-china-by-month-2023
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/automotive-sales-in-china-by-month-2022

EVシフトの将来性

自動車普及率

ガソリン車を段階的になくし、電気自動車(EV)へシフトする動きが世界で広がっています。2016年にはノルウェーが、ガソリン車販売禁止に関する規制を発表しました。これをきっかけに、ガソリン車から電気自動車への転換が国際的に広がり、世界中の国が追随するようになりました。

また、フランスは2017年に「2040年までにガソリン車およびディーゼル車販売を禁止する表明」を発表したほか、中国では2035年までに新車販売をEV(ハイブリッド含む)のみとする目標を設定し、「中国製造2025」という産業政策に関する計画では、EVを10大重点産業分野の1つに指定しています。

こうした世界的な流れを受けて、日本でもEVシフトに向けた動きが加速しています。例えば、経済産業省が2021年に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においては、2035年までに新車販売(乗用車)において電動車のシェア100%を実現することを目標として掲げています。今後は、技術革新による充電時間の短縮や航続距離の長距離化、充電インフラの普及、市場拡大による製造コストの低減などの要因により、EVはさらに普及していくことが予想されます。

とはいえ、国や地域によってEVに関する技術レベルや市場環境、エネルギーおよび電力の供給状況などに大きな違いがあり、EVシフトを首尾よく進められる地域もあれば、思うように進まない地域もあります。例えば、インドでは電線を分岐させて勝手に電気を盗む「盗電」が珍しくなく、EV普及の不安要素となっています。

また、原料供給から製造、流通・販売、廃棄・リサイクルまでの工程における環境負荷を明らかにする「ライフサイクルアセスメント」にも配慮する必要があります。新興国を中心にライフサイクルアセスメントが不十分な国・地域もあり、こうした状況を踏まえると、世界的にEVシフトが一気に進むと予想するのは現実的ではありません。EVシフトは徐々に進みつつも、当面はガソリン車やハイブリッド車などを含め、さまざまなタイプの自動車が混在する状況が続くとみられます。

しかし、気候変動対策は世界的な喫緊の課題であり、世界各国が「2050年のカーボンニュートラルの実現」を目指していることを踏まえると、2050年にはガソリン車よりEVのシェアが高くなっている可能性は十分に考えられるでしょう。

EVシフトの課題

課題

今後EVシフトをさらに進めていくためには、現状では越えなければならない課題が多くあります。特に日本の場合、前述のように世界の主要国に比べEVの普及が遅れていることから、「EVは環境にやさしく、経済的であり、ストレスなく乗れる便利な自動車である」という認識が広く共有されるようになることが不可欠です。
補助金などを充実させて車両の購入価格を抑える取り組みを進めることはもちろん、充電環境の整備や航続距離の課題などを解消していく必要があります。具体的な課題としては以下のものが挙げられます。

・充電環境の不備
EVは充電に時間がかかるため、給油に比べて出先での利便性が低く、EVの普及を阻害しています。充電スポットをさらに増やすことも必要です。

・急速充電の悪影響
充電時間の課題は急速充電により解消できますが、急速充電を繰り返すと、バッテリーの劣化が早まる可能性があるという別の課題が生じます。

・長距離使用の課題
EVで長距離を走行すると途中で充電する必要がありますが、前述の通り充電環境が整っていないと不便さを感じてしまいます。

・車両価格の課題
EVは一般的に、同等クラスのガソリン車に比べて価格が高い傾向があります。また、現在のバッテリー技術では、バッテリーが劣化すると航続距離が落ちる課題もあります。そのため、価格と航続距離の改善、およびバッテリーの技術革新がEVの普及拡大には不可欠とされています。

スマートエルライン™ライトの紹介

本記事でご紹介したように、EVシフトは世界的なトレンドとなっており、日本でも今後さらに普及することが予想されます。
EVは環境にやさしい車両であることに加え、給電システムをあわせて導入することで停電などの非常時にEVのバッテリーを電源として利用できる点も魅力です。

日東エルマテリアルが提供する「スマートエルライン™ライト」は、停電時に太陽光発電、自動車、発電機の3つから住宅へ電気供給ができるシステムです。
EVから住宅に電力を供給するための機器であるV2H(Vehicle to Home)は、本体価格に加え設置工事費も高く、導入ハードルが高い課題があります。スマートエルライン™ライトを導入すれば、EV充電機と組み合わせることで、約3分の1のコストで住宅の給電と車両への充電が可能な簡易V2Hシステムとして機能します。

下記の資料では、スマートエルライン™ライトに対応している車種を、社別、車種別、グレード別にご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

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