夜光と蓄光のちがいとは?仕組みから活用法までご紹介
暗闇で自ら発光する現象に「夜光」と「蓄光」がありますが、これらにはどのような違いがあり、またどのように活用されているのでしょうか。本記事では、夜光と蓄光の仕組みについて解説したうえで、夜光が現在では使われなくなった理由や蓄光の活用方法などをご紹介します。
「夜光」「蓄光」について
夜に光る塗料が使用されている製品はテレビリモコンや防災グッズ等、日常生活でも見ることができます。
それら塗料の種類は大きく分けて「夜光」と「蓄光」があります。
夜光
夜光とは、発光物質を刺激する刺激物質を使用することで、外部からのエネルギーを受けずに発光(自発光)することが可能なものを指します。刺激物質には、微量の放射性物質 (ラジウム・トリチウム)が用いられていました。
蓄光
蓄光とは、蛍光灯や太陽光などが放つ光エネルギーを蓄え、周囲が暗くなったときに光ることを指します。夜光とは異なり、外部からの光エネルギーの供給が必要であるものの、 材料には人体への影響のない蓄光材料を使用しています。 なお、蓄光は強力に発光するわけではありませんが、一定時間継続的に光るため、暗闇で の目印として広く活用されています。
光る仕組み
夜光の場合
夜光の場合、ラジウムなどの放射性物質が放つ放射線が蛍光物質に当たり、その際に光が発生することで自発光します。
蓄光の場合
蓄光は、光エネルギーを蓄える性質を持つ硫化亜鉛(ZnS 系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4 系)などの蓄光材料が、太陽などの自然光や蛍光灯の光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを光に変換して放出することで発生します。 光エネルギーを受ける際、蓄光材料に含まれる電子が紫外線領域の波長エネルギーに反応し、電子エネルギーが過剰になります。これを「励起状態」と言います。励起状態ではエ ネルギーのバランスが不安定であるため、過剰なエネルギーを放出して元の状態(基底状態)に戻ろうとします。このとき、放出されるエネルギーは可視光となるため、私たちはその物質が光っていると認識できます。
夜光が使われなくなった理由
かつては時計の文字盤などに夜光材料が利用されていた時代がありました。しかし、現在 では暗闇で自発光する素材としては一般的に蓄光材料が活用されており、夜光材料は使わ れていません。夜光(自発光)に使用される放射線物質が、人体に悪影響を及ぼすことが 判明したためです。 現在流通している蓄光製品には放射性物質は含まれていないため、健康面や環境面への影響はありません。
夜光と蓄光以外の光の活用
夜光や蓄光以外にも、防災用品やホビー用品、インテリアとして「蛍光材」や「反射材」 などが活用されています。
蛍光材
蛍光とは、ある物質に光が当たったとき、その光を吸収することで明るく発色することで す。蛍光材が放つ光の波長によって、青や緑など視認される色が変わります。 蛍光は、日中の屋外や照明で照らされた室内など、明るい環境で鮮やかに見える特徴があ ります。一方、蓄光とは異なり暗闇では発光しません。明るい場所では一般色より目立つため、注意喚起や視認性向上に役立ちます。
反射材
反射とは、物質が受けた光を吸収せず、そのまま跳ね返すことで明るく見えることを言い ます。夜間や暗所で光源がある場合に、離れた場所からでも明るく見えます。そのため、 車のヘッドライトなど光源がある夜間の環境での事故防止や注意喚起に役立ちます。
蓄光の活用方法について
「夜光」も「蓄光」も、暗所での視認性向上のために活用されてきました。以下では、蓄光の活用方法についてご紹介します。
蓄光塗料
蓄光塗料は対象物に塗ることで光らせることができる塗料のことです。建物の出入り口の 段差や階段などに塗ることで、停電や災害発生時に避難する際に転倒を防ぐのに役立ち、 スムーズな避難を可能にします。後述の蓄光テープを貼り付けにくい、凹凸のある面に塗 れることもメリットです。
蓄光テープ
蓄光テープは蓄光顔料を含む粘着テープのことです。こちらも暗所で発光するため、災害で停電が発生したときに暗闇の中を避難するのに役立ちます。貼り付ける場所としては、 工場の階段や障害物のほか、床に矢印状に貼り付けることで誘導路としても活用可能です 。 また、懐中電灯やヘルメットなど、非常時に必要な防災用品に貼ることで、暗闇でもすぐ に手に取ることができます。
JIS規格について
防災目的で蓄光テープの導入を検討する場合には、JIS規格を満たす製品を購入する必要があります。JIS規格を満たす製品は輝度によってJB(中輝度)、JC(高輝度)、JD(超高輝度)の3つのグレードに分けられます。工場内の普段から光が当たりにくい個所などに設置する場合は、薄暗くても十分に光を蓄えられるJDクラスを選択するなど、使用環境に応じて適した製品を選ぶことが大切です。
まとめ
夜光は微量の放射性物質を用いることで、外部から光エネルギーを受け取ることなく自発光しますが、人体への影響が懸念されることから、現在では夜光の仕組みを利用した製品はほぼありません。
一方、蓄光は外部から光エネルギーを吸収し、暗所でそのエネルギーを放出して光る現象のことです。蓄光塗料や蓄光テープとして、防災用途を中心に広く利用されています。
日東エルマテリアルでは、防災用途に開発された高輝度蓄光テープ「エルクライト™ JB.JC.JD」をご用意しています。
JIS規格に応じた3種類のグレード(JD、JC、JBクラス) があり、耐候性、耐摩耗性、耐薬品性等にすぐれ、耐久性が高い点が特徴です。 蓄光テープにご興味のある方向けに資料もご用意しておりますので、 以下資料よりご確認ください。