太陽光発電のメンテナンスの必要性と費用相場について解説
太陽光発電を安定的かつ効率的に稼働させるためには、定期的にメンテナンスを行うことが非常に重要です。しかし、メンテナンスをどのくらいの頻度でどうやって行えば良いのか、また費用はどのくらいかかるのかなどを把握していない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、太陽光発電のメンテナンスの必要性や費用について知りたい方に向けて、メンテナンスの種類や頻度、メンテナンス業者の選び方、費用の相場などを解説します。
太陽光発電のメンテナンスの必要性
太陽光発電システムのメンテナンスは、システムの寿命を延ばし、安定的な稼働を実現するために必要不可欠です。定期的なメンテナンスにより、発電効率が向上し、運用コストの削減につながります。
また、法的な基準を満たし、安全性を確保するためにも重要です。
以下では、メンテナンスがなぜ必要なのか詳しく説明します。
発電効率を維持するため
メンテナンスは、太陽光発電システムの発電効率を最適な状態で保つために必要不可欠です。
パネルの表面に汚れや塵がたまると、光の吸収効率が低下し、結果として発電量が減少します。汚れを放置したままで稼働していると、発電効率は10年後に3~5%ほど低下し、20年後には15%以上低下することも珍しくありません。
そこで、定期的なクリーニングや点検を行い、汚れをこまめに取ることが重要です。太陽光パネルは屋外に設置するため、埃や黄砂、花粉、鳥のフンなどが付着するのを防ぐことはできませんが、メンテナンスを通じてこまめに汚れを取り、トラブルの発生を未然に防ぐことで発電効率の低下を抑えることが可能です。
故障や発電量低下を防ぐため
メンテナンスを怠ると、システムの一部が故障するリスクが高まります。特に、接続点やケーブルの劣化は重大な故障を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。故障してしまうと、当然復旧までの期間発電できないため、発電量は大きく低下します。
これを防ぐために、定期的な精密点検が必要不可欠です。こまめに点検を行い、問題が起きている箇所を特定して早期に対処することで、システム全体の寿命を延ばし、安定した稼働につなげることができます。
法律で義務化されているため
一部の国や地域では、太陽光発電システムのメンテナンスが法律で義務付けられている場合があります。
日本では、電気事業法や改正FIT法により、一定の条件を満たす発電所には定期点検が義務付けられています。例えば、2017年に制定された改正FIT法では、それまでメンテナンスが義務付けられていなかった50kW未満の太陽光発電を含む、FIT制度を活用しているすべての太陽光発電システムに対してメンテナンスが義務化されました。
これらの法律に従って適切なメンテナンスを行わない場合、FIT認定の取り消しといった罰則を受ける可能性がありますので、法令遵守は欠かせません。
他者に損害を与えないため
太陽光発電システムが適切にメンテナンスされていないと、周囲に損害を与えるリスクも高まります。例えば、パネルが破損した状態を放置している場合、強風や自然災害時に飛散し、近隣の建物や農地などに損害を与えることがあります。飛散したパネルが人に直撃し負傷させてしまう可能性もゼロではありません。
また、自然災害により破損・浸水した太陽光発電設備をそのままにした状態で接近すると、感電するリスクもあります。
安全性を確保し、他者に損害を与えないよう、定期的なメンテナンスと点検を通じて故障や破損した状態を放置しないようにすることが重要です。
太陽光発電のメンテナンスの種類と頻度
メンテナンスについては、国が公表している再エネ事業計画策定のガイドラインを踏まえ、一般社団法人日本電機工業会」および「一般社団法人太陽光発電協会」が、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン 第2版」をまとめています。事業者は、基本的にはこのガイドラインに則った方法や頻度でメンテナンスを実施することになります。
このガイドラインによれば、出力が50kW未満(住宅用を含む)かそれ以上かによって、メンテナンスの頻度は異なるとされています。
50kW未満の太陽光発電設備については、自主点検を行えば良く、点検の頻度については明示されていません。一方で、50kW以上2,000kW未満の設備においては、年間で少なくとも2回以上のメンテナンスが必要です。
ただし、前述の改正FIT法により、50kW未満でもFIT制度を活用している場合には、点検が義務付けられています。
メンテナンスの種類としては、目視と測定機器を使った点検の2種類があります。
目視は、太陽光発電システムの基本的な点検方法です。
主にパネルの汚れや破損、架台の損傷や錆び、ケーブルの劣化や接続状態などを確認します。パネルの表面に汚れが付着している場合は、発電効率が低下しないように清掃します。
測定機器を使用した点検は、目視よりも詳細かつ定量的な数値情報を得るために行います。
具体的には、システムの各部分の電圧を確認する「電圧測定」や、パネルやケーブルの絶縁状態を確認する「絶縁抵抗検査」、サーモグラフィーカメラでパネルの発熱状況をチェックする「IR測定」などがあります。
太陽光発電のメンテナンス業者の選び方
太陽光発電のメンテンナンスは専門のスキルや測定機器などが必要であるため、基本的には業者に依頼する必要があります。メンテナンス業者は国内に数多く存在しており、しっかりとしたメンテナンスを行ってくれる業者を選ぶことが大切です。
具体的には、以下の3点を意識して選ぶと良いでしょう。
資格の有無
メンテナンス業者を選ぶ際には、どのような資格を持っているのか確認することが非常に重要です。
特に、電気設備の工事や取り扱いのために必要な国家資格である「電気工事士」や、太陽光発電設備の保守・管理に関する専門的なスキルや知識を持つ「太陽光発電メンテナンス技士」の資格を有しているか確認すると良いでしょう。
これらの資格を持つ業者であれば、安心してシステムの点検や修理を依頼できます。
なお、「電気工事士」の資格には第一種と第二種があり、第二種を取得していれば、家庭用太陽発電設備をはじめとする600V以下で受電する設備の工事に従事できます。
「太陽光発電メンテナンス技士」は、一般社団法人太陽光発電安全保安協会(JPMA)が付与している資格であり、資格認定講座や技能講習会を受講し、確認テストに合格すると資格を取得できます。
また、太陽光発電検査協会(PIA)による技術認定制度もあり、協会の講習や研修を修了した者に「技術認定」が交付され、保守点検を行うことができます。
一般的に、販売店や施工工事業者は、これらの資格を持った技術者を雇っているか、もしくは資格を持つ技術者と契約しているので、業者を選ぶ際には資格の保有者がきちんと対応してくれるかを事前に確認しておくことがおすすめです。
実績と評判
業者の実績と評判を確認し、信頼できるかどうか判断することも大切です。
これまで何件程度太陽光発電システムのメンテナンスを行ってきたか、またどのくらいの期間メンテナンス事業を実施しているかという過去の実績数や、評判の善し悪しをチェックします。
評判については、顧客によるレビューや評価をインターネット上で調べたり、メンテナンスを受けたことがある知り合いがいればその内容や満足度を聞いてみたりすると良いでしょう。
提供するサービス内容
提供するサービスの内容も業者選びの重要なポイントです。
具体的には、基本的な点検と修理だけでなく、遠隔監視やパネル洗浄、草刈りなど、幅広いサービスを提供しているかを確認します。
また、緊急対応が可能であるか、修理・交換サービスの範囲はどのくらいか、定期点検のスケジュールや契約内容が柔軟であるか、といった点も大切な要素です。包括的なサービスを提供する業者であれば、トラブル発生時にも迅速に対応してくれるため、安心して依頼できます。
太陽光発電のメンテナンスにかかる費用
太陽光発電のメンテナンス費用としては、主に以下の2種類があります。
設備の定期点検費用
住宅用設備の点検の場合、法定義務はありませんが、最低でも4年に1回の頻度で定期点検を行うことがおすすめです。
住宅用であれば、定期点検1回あたりの費用は1〜2万円程度が相場であり、FIT制度においては1回1万円が買取価格算定の基礎となっています。
太陽光パネルの清掃が必要な場合、1万円ほどの基本料金と、パネル1枚につき500~1,000円ほどの清掃料を見込んでおくと良いでしょう。
パワーコンディショナーのような機器の点検に関しては、販売店の無料保証の範囲内であることも少なくありません。
なお、定期点検で故障や破損が見つかり、修理交換が無料保証の対象範囲外となっている場合、パワーコンディショナーでは約10万円、メーターでは1~5万円ほどが相場となっています。
故障時の修理・部品交換費用
メーカーの保証期間内であれば、通常の設備については故障時に無償で対応してくれるケースが一般的です。保証期間を超えた場合には有償となります。
また、自然災害によって発電設備が故障するケースもありますが、基本的には無料保証の範囲内で対応してもらえます。ただし、保証額の上限を超える場合には有料となる可能性があります。
自分でできるメンテナンス
業者に依頼するメンテナンス以外に、日常的に自分で行えるものもあります。
具体的には、パネル表面の汚れや破損の確認や、配線異常のチェックなどが挙げられます。また、インバータの表示を確認し、エラーコードが出ていないか定期的に監視することも日常点検に含まれます。これにより、問題のある箇所を早期に発見し、大きなトラブルの予防につなげることができます。
このように、太陽光発電システムを最適な状態で運用するためには日常的な点検が重要であるため、自分でできるメンテナンスは日頃からなるべく丁寧に行っておきましょう。
専門家に依頼すべきメンテナンス
電気系統の点検については、専門的な知識や技術が必要であり、素人がむやみに手を出すと感電の危険があるため、専門の業者に依頼することが基本です。
電気点検では、システム全体の絶縁抵抗値や接続部分の劣化、漏電の有無などの確認に加えて、検査機器を用いて詳しいデータを収集し、必要に応じて修理や部品の交換を行います。
ソーラーパネルの洗浄も、高所での作業になることが多く落下の危険があるため、専門家に任せるべきです。また、適切な洗浄方法を知らないとパネル表面に傷をつける可能性があり、万が一漏電が発生している場合には感電するおそれもあるため、こうした点からも自分で洗浄することは避けるべきです。
専用の洗浄機器と技術を持つ専門業者に依頼することで安全に洗浄でき、パネルの性能を長期間維持できるようになります。
太陽光発電のランニングコスト
太陽光発電システムのランニングコストとしては、設備の定期点検や故障時の修理・部品交換、草刈りやパネル清掃などにかかわるメンテナンス費用が多くを占めます。
一般的に、年間のメンテナンス費用はシステム容量や設置環境によって異なりますが、家庭用システムでは数万円、商用システムでは数十万円以上かかることもあります。計画的な予算管理や安定的な設備の運用を実現するためには、こうしたコストをあらかじめ考慮しておくことが大切です。
多くのオーナーは、システムの長寿命と高効率を維持するために、専門業者と定期的な点検や緊急時の対応を含むメンテナンス契約を結んでいます。年間契約費用としては、数千円から数十万円程度が一般的です。
例えば、1年に一度の精密点検および年数回の草刈りやパネル清掃をセットにしたパッケージ契約を活用することで、全体のメンテナンス費用を抑えつつ、安定した運用が期待できます。
まとめ
太陽光発電は基本的には故障しにくい性質であるがゆえに、メンテナンスの重要性や種類、方法などを把握できていない方も少なくありません。万が一トラブルが発生した場合の修理交換費用を事前に想定しておらず、予定外の費用がかかってしまうこともよくあります。
太陽光発電システムの税制上の耐用年数は17年と定められていますが、実際には20年以上稼働することが一般的です。長期間運用することを踏まえ、メンテナンスに関する正しい知識を身に付けておく必要があります。
これから太陽光発電の設置を検討される方は、メンテナンスの知識や費用相場を事前にインプットし、計画的に導入することが大切です。
また、蓄電池を併用していない場合、発電した電気はその瞬間に使わなければならず、例えば昼間に貯めた電気を夜間に使用することができない難点があります。加えて、太陽光発電のみ稼働している場合、停電時に1カ所のコンセントしか使えないため、複数の家電が使用できません。
そのような課題に対応するためには、太陽光発電と相性の良い給電システムの導入がおすすめです。
スマートエルライン™ライトは、太陽光発電で蓄えた電力やエコカーからの電力をすぐに使用できる給電システムであり、導入することで停電時に太陽光発電経由で電気を使用できます。
最大1500Wまでであれば複数の家電を同時に使うことができ、停電時に自家発電が可能な太陽光発電との相性の良さが特長です。簡単施工かつ低コストで、停電時に最低限の電気を使える自宅を実現します。
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